ビットコインやイーサリアム等の暗号通貨(あまり馴染みのない言葉ですので、以下「仮想通貨」とします)に係る確定申告ってどうすればいいの?という質問を多々受けてきました。仮想通貨の取り扱いについては、税法上の決まりがなく、確定申告が必要なのはわかるけどどの所得区分にしたらいいかということが判明していませんでした。

しかし、仮想通貨の取引は年々増えており、国税庁としても放置するわけにはいきません。そしてこの度、国税庁から仮想通貨に係る取扱いが発表されましたので、その内容を確認していきましょう。

仮想通貨の定義

金融庁では、以下のものを仮想通貨として取り扱うこととしました。

・物品の購入等をした場合の代価弁済のために不特定の者に使用することができる
・不特定の者を相手方として購入及び売却可能
・電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

仮想通貨に該当するものは「貨幣」と同じ扱いになります。

仮想通貨の売買に消費税は発生するか

仮想通貨の売買は、従前は消費税が課税されていました。しかし、平成29年7月1日以後の取引については消費税の非課税取引となります。仮想通貨は貨幣と同じ取扱いになりますので、仮想通貨の売買に係る消費税については課さないという見解です。つまり、購入時も売却時も消費税抜きの金額で取引をするということですね。

また、改正前に譲り受けた仮想通貨について個別対応方式により仕入税額控除を行う際は、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」として全額を仕入税額控除することができます。

ただし、平成29年6月30日に100万円(税抜)以上の仮想通貨(国内取引に限ります)を保有する場合において、平成29年6月中の仮想通貨保有数量の平均保有数量と比較して増加しているときは、その増加部分の課税仕入に係る消費税については仕入税額控除ができません。

それは「ちょっとずるいよね」ということですね。

仮想通貨売買に係る所得の区分について

さて、仮想通貨の売買はどの所得区分になるのでしょうか。普通に考えますと譲渡所得か雑所得ですが、、、これに対して国税庁は以下のように回答しています。

ビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。(国税庁HPより抜粋)

ビットコインと名指ししていますが、イーサリアム等の仮想通貨についてもこれに準じて取り扱うものと考えられます。すなわち、事業として仮想通貨の売買をしていない場合は、雑所得(総合課税)として取り扱うことになります。

なお、雑所得ですので、プラスはあってもマイナスはありません。仮想通貨の売却損が出た場合、税金が安くなる訳でもなく、ただ損をし、利益が出た時だけ課税されることになります。従前のFX取引と同じ扱いですね。

なので、何年か後にはFXのように雑所得の分離課税となるかも知れませんが、現状は雑所得の総合課税となり、儲かれば儲かるほど税率が高くなる「悲惨な」取扱いとなります。

ポイント)仮想通貨に係る所得は雑所得(総合課税)として取り扱う

※条文ではなくタックスアンサーベースですので確定した取扱いではありません。

どういった場合、仮想通貨に係る確定申告が必要か

ということで、売却益がある場合は雑所得として確定申告が必要となります(給与所得者の場合は給与以外の所得が年間20万円を超えない場合等は確定申告不要です)。売却損がある場合は、残念ながら何もできません。ただ、損をしましたというだけです。。。

さて、この「売却」ですが、何をもって売却というのでしょうか。
至極簡単に言ってしまうと、

1つの仮想通貨をその仮想通貨以外に替えた場合

になります。
1つずつ例を確認していきましょう。

仮想通貨の購入時の課税関係

仮想通貨を購入した時点では売却とは関係ありませんので、課税関係はありません。1ビットコインを100万円で購入したとしますと、100万円とビットコインを交換しただけですね。なので、特に課税されることはありません。

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仮想通貨の取得価額

仮想通貨の取得価額は購入価格となりますが、購入・購入ときた場合は購入単価の調整が必要になります。具体的には、購入金額の合計額を購入数量の合計量で除して購入単価を算出します。

例)

1/10 1ビットコインを100万円で取得 ⇒ 取得価額100万円/1BTC
2/5   2ビットコインを260万円で取得 ⇒ 取得価額の調整を行う

■取得単価の算定
(100万円+260万円)÷(1+2)=120万円/1BTC

3/30 1ビットコインを125万円で売却

■売却損益の算定
125万円ー120万円=5万円の売却益

仮想通貨の含み損益の課税関係

ここがたまに勘違いされるところですが、仮に100円で購入したビットコインが100万円になろうと1,000万円になろうと、ただ交換しただけの状況では課税されることはありません。いわゆる、「含み益」に対しては所得が確定しませんので課税対象外となります。

ただし、「含み損」についても同様で、売却益と含み損を相殺することはできません。いいとこどりはできないんですね。

仮想通貨で物品を購入した場合の課税関係

よくある質問がこれです。家電量販店等で仮想通貨を使えるお店がちょろちょろ出てきました。この場合はどうなるのでしょうか。売却の定義は「1つの仮想通貨をその仮想通貨以外に替えた場合」ですので、1つの仮想通貨が物品に替わっていることから売却を認識します。

つまり、

・仮想通貨を売却して
・その売却したお金で物品を購入した

と考えます。

例)
1,000円で購入した仮想通貨で物品30,000円を購入した。

30,000-1,000=29,000円 ⇒ 売却益

1,000円の仮想通貨を3万円で売却したものとして、差額を売却益として認識します。

仮想通貨を売却した場合の課税関係

仮想通貨を売却した場合は、もう考えるまでもなく売却を認識します。なお、仮に日本円ではなく米ドルやユーロで売却したとしても、日本円に換算して売却損益を認識します。

例)
1,000円で購入した仮想通貨を100ドルで売却した。なお、売却時のレートは1ドル110円である。

(100×110)-1,000=10,000円 ⇒ 売却益

1,000円の仮想通貨を11,000円で売却していますので、1万円が売却益になります。

仮想通貨で別の仮想通貨を購入した場合の課税関係

これもよくある質問です。例えばビットコインとイーサリアムを両替したような場合の取扱いです。これは、「仮想通貨で物品を購入した場合」と全く同じ取扱いになります。

つまり、

・仮想通貨を売却して
・別の仮想通貨を購入した

と考えます。

例)
1,000円で購入したビットコインでイーサリアム(時価40,000円)を購入した。

40,000-1,000=39,000円 ⇒ 売却益

1,000円のビットコインを4万円で売却したものとして、差額を売却益として認識します。なお、この場合のイーサリアムの取得価額は4万円となります。

仮想通貨に係る確定申告の方法

仮想通貨を売却した年は原則として確定申告が必要となります。ただし、給与所得者の場合は給与以外の所得(利益ベース)が20万円以下の場合、必要ありません。また、何の所得もない場合は、売却益が38万円以下であれば、確定申告不要になります。

確定申告をする場合は、売却益を雑所得として申告しますが、売却益の計算は以下のように行います。

売却金額-取得価額(購入代価+購入手数料等の費用)-売却手数料や口座管理料等の直接費用

なお、同一年度に売却損失がある場合は、その売却損失を含めて計算することができます。

例)
8/10 100万円で購入したビットコインを400万円で売却(売却手数料3万円)
10/20 300万円で購入したイーサリアムを270万円で売却

雑所得の金額=400万円-100万円-3万円-(300万円-270万円)=267万円

※他に所得がなく、各種控除もない場合の上記に係る所得税額は、131,500円となります。

おわりに

ビットコインをかなり昔に購入された方は、購入価格の何百倍とか何万倍にもなっているかも知れません。そろそろ売ろうかなと思っている方は、確定申告を忘れないようにして下さいね。

なお、平成28年までに売却された場合の取扱いについては明言がありませんが、恐らく上記と同じ取扱いになるものと考えられます。確定申告をしていなかった場合は、修正申告と言う手続きがありますので、税務署に指摘される前に申告を済ませておくことをおススメ致します。

ちょっと仮想通貨の利益がヤバい・・・という方はこちらよりお気軽にご相談ください。

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税理士KEN(冨田健太郎)
税理士KEN(冨田健太郎)
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