相続した財産の中に不動産がある場合には、1つ大変な手続きがあります。それが「相続登記」です。
登記と聞くだけで頭が痛くなってしまう方もいらっしゃるかも知れませんが、基本的に相続と不動産は避けては通れませんので、結果として登記も避けられません。以下、相続登記についてできる限り簡単にご説明しますので、ご一読下さい。
目次
相続登記は必要か
相続登記をすることにより、被相続人(亡くなった方)の不動産を相続人の名義に変更することができます。必要か不要かと言われますと「しなくてもいい」です。
しかし、相続登記が完了していないと売却ができませんし、次の相続があったとすると何かと面倒です。ですので、相続登記は早めにしておいた方がいいと思います。
相続登記は3種類ある
相続登記の手続きには、以下の3種類があります。
- 法定相続による相続登記
民法で定められて法定相続割合に従って行う登記になります。
例えば、配偶者と子1人だった場合は、1/2ずつの登記を行うことになります。 - 遺産分割による相続登記
分割協議によりその不動産を取得することとなった相続人が行う登記です。 - 遺言書による相続登記
遺言書によりその不動産を取得することとなった相続人が行う登記です。
いずれの場合でも、その不動産を相続した相続人が登記を行うことになります。
相続登記の場所
相続登記は法務局で申請しますが、どこの法務局に行けばいいのでしょうか。答えは、その不動産の所在地を管轄する法務局になります。
例えば、その不動産が東京都千代田区にあれば東京法務局、千葉県市川市にあれば千葉地方法務局市川支局になります。間違って、ご自宅のそばにある法務局に行かないようにしましょう。
登録免許税はいくら?
相続登記には、以下の登録免許税が発生します。
登録免許税=固定資産評価額☓4/1000
例えば5,000万円の土地家屋でしたら、5,000万円×4/1000=20万円になります。結構高いように感じるかも知れませんが、通常の登録免許税は20/1000です。相続登記の場合は、かなり登録免許税が優遇されているんですね。
司法書士に依頼するといくら位かかる?
登記と言えば司法書士です。相続登記についても、もちろん司法書士にお願いすることができます。司法書士にお願いすれば不備なく終わりますので、かなり楽だと思います。ただ、気になるのは費用ですね。
調べてみたところ、5万円程度が多かったです。僕が提携している司法書士もそのくらいですので、大体5万円が相場なんだなと考えておきましょう。
こんなにたくさんある相続登記に必要な書類
相続人が用意する書類
相続登記をする場合は、以下の書類を用意する必要があります。
- 登記申請書(法務局のフォーマット)
- その不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- その不動産の固定資産評価証明書(市区町村役場(東京23区のみ都税事務所)で取得)
戸籍謄本の取り方はこちらをご参照下さい。
これ以外の書類は、状況により異なります。
■法定相続の場合
- 委任状(代理人が申請する場合又は相続人のうちの1人に手続きを委任する場合)
■遺産分割の場合
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明
■遺言書の場合
- 遺言書
なお、印鑑証明・住民票は3ヶ月以内のものでなければならないと考えられている方が多くいらっしゃるのですが、最新の情報が載っていれば古いものでも構いません。いちいち取り直す必要がないのは嬉しいですね。
原本還付
戸籍謄本や印鑑証明書などを何度も取り直すのは面倒ですし、費用もバカになりません。そこで、「原本還付(げんぽんかんぷ)」手続きされた方が良いかと思います。原本還付の手続きは簡単で、提出書類には原本還付してもらいたい書類のコピーを添付し、原本は別途まとめて提出するようにしておけばOKです。
なお、コピーの戸籍謄本等に「上記は原本に相違ありません」と記載して署名押印しましょう。複数枚ある時は割印をして最後だけ署名押印すれば問題ありません。
戸籍謄本等のコピーはあらゆるところで使えますので、できればスキャナーに保存しておきたいですね。そうすれば、いつでも印刷することが可能です。
収入印紙
登録免許税分の収入印紙を購入して、登記申請書の余白に貼り付けます。この際、割り印は不要ですのでご注意下さい。消印は法務局の方でしますので、ただ貼り付けるだけにして下さいね。
いざ登記申請書の作成
登記申請書には、基本的に固定資産評価明細書の事項を書き写していくことになります。
以下、記載例でご確認下さい。
なお、登録免許税の計算は少し分かりづらいので、以下事例で確認しましょう。
例)
土地:12,565,500円
家屋:6,183,200円
合計:18,748,700円
課税標準:18,748千円(千円未満切捨)
登録免許税:18,748千円×4/1000=74,992円⇒74,900円(百円未満切捨)
ということで、4/1000を掛ける金額は最後に千円未満を切捨て、掛けた後の金額は100円未満を切捨てることになります。
(ただし、登録免許税が1,000円未満の場合は1,000円です)
相続登記手続きのまとめ
かなり長々と書いてしまったので、ここで相続登記完了までの流れを確認しましょう。
書類取得
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明と、結構な数の書類を取得する必要があります。
分割協議書
分割協議による相続登記の場合には分割協議書と相続人全員の印鑑証明が必要になります。分割協議が長引いてしまうと相続登記もなかなかできません。そうするとその不動産を売却することもできませんので、早めに協議を終わらせたいものですね。
相続登記
書類が整ったら、あとは申請するだけです。慣れない作業でしょうから、書類の書き方に苦戦するかと思いますが、法務局に必要書類を持っていけば優しく教えてもらえますので、ご活用下さい。なお、事前に電話で予約をしておくと良いでしょう。
司法書士にお願いしてもいいと思いますが、折角なのでご自身でチャレンジしてもいいかも知れませんね。