いざ相続があった場合、恐らく税理士にお願いするのが一般的かと思います。ただ、各種資料の入手手続きについては、税理士ではなく自分でされることをおススメします。なぜなら、結構な料金を取られるからです。
たかだか戸籍謄本を取得するだけで何万円とか普通にありますので、できることは自分でやっておきたいですね。
ということで、今回は相続手続きで必要な書類の入手方法についてお話します。
目次
そもそも誰が相続手続きをするのか
相続手続きは、基本的に相続人が行います。当然ですね。
相続なり遺贈(遺言による贈与)なりで財産を受け取る人が、手続きをしていきます。
(税理士に頼むような場合は、代表相続人を選定した方がいいと思います)
遺産分割の手続き
遺産分割をすることで、各相続人が取得する財産が決まります。逆に言いますと、遺産分割がされない場合には誰がどの財産をどれだけもらうのかが確定しません。
そのため、なるべく早い段階で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しておきましょう。
なお、遺産分割協議書には、相続により財産を受け取る人全員の署名押印(実印)が必要になります。
謄本関係の手続き
各相続人が行う手続き
- 戸籍謄本の取得
- 印鑑証明の取得
これらの手続きは市区町村役場に行くだけでできますので、各相続人がご自身でやっておきましょう。
相続人のうちの誰かがする手続き
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍
生まれてから亡くなるまでずっと同じところに住んでいれば簡単ですが、大抵は幾度か戸籍が変わっていますので、結構面倒な手続きになります。詳しくはこちらをご参照下さい。
土地・家屋がある場合の手続き
相続財産に土地・家屋がある場合には、その土地・家屋に係る書類を集める必要があります。
- 固定資産税の納税通知書
- 名寄帳
これらはその土地・家屋が所在する市区町村の役場に請求をします。
- 登記事項証明書(=登記簿謄本)
その土地・家屋を管轄する法務局で取得します。
もし、土地の評価をするような場合は、以下も取得します。
- 公図
- 測量図
- ブルーマップ
- 都市計画図
あとは路線価ですね。
路線価は国税庁のサイトで確認することができます。
なお、いつの路線価を使えばいいのかという問題がありますが、これは被相続人が亡くなった年度のものを使います。平成28年10月に亡くなったのであれば平成28年度の路線価ですね。
ただ、路線価は毎年7月頃に公表されますので、例えば平成29年4月に亡くなったような場合、平成29年年度の路線価はまだ公表されていませんので、公表されるまで待つ必要があります。
ちなみに、路線価がない地域の場合は倍率方式というものを採用します。倍率についても、国税庁のサイトで確認できます。
山林がある場合
- 森林簿
- 森林計画図
各市区町村のサイトから閲覧できることが多いので、確認してみて下さい。
小規模宅地の減額を受ける場合
小規模宅地の特例を受ける場合、以下の書類を用意する必要があります。
居住用の場合
- 住民票
居住用の宅地で、相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがない等の要件を満たす相続人が被相続人の居住用宅地について小規模宅地の特例を受ける場合は、追加で以下の書類を取得します。
- 戸籍の附票(相続開始日以後に作成されたもの)
- 相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己又は事故の配偶者の所有する家屋以外の家屋である旨を称する書類
要するに、相続開始日の3年前の日から相続開始日まで、自己又は自己の配偶者所有の家屋に住んでいなかったことを証する書類が必要になります。
戸籍の附票は住所の履歴がわかるので相続開始日の本籍地に行って取得しましょう。自己又は配偶者所有でないこことを証するために、借家の賃貸借契約書があるといいですね。ない場合は、家賃の振り込みの事実がが分かる預金通帳のコピーなどでもいいと思います。
また、被相続人が養護老人ホームに入所していた等の理由によりその宅地が被相続人の居住に供されていなかった場合には、次の書類を用意する必要があります。
- 被相続人の戸籍の附票(相続開始日以後に作成されたもの)
- 介護保険の被保険者証の写し等
- 施設に入所する際の契約書等
特定事業用の場合
一定の郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等の場合は、以下の書類を取得します。
- 総務大臣が交付した証明書
特定同族会社事業用宅地等の場合
特定同族会社とは、被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式等の総数の50%超を有している会社を言います。その会社の事業用に土地を供していた場合は小規模宅地の減額の適用があります。
この際の必要書類は、以下になります。
- その法人の定款(ていかん)
- 被相続人及び被相続人の親族等がその法人の発行済株式等の50%超を有していることを証する書類
各財産・債務ごとに必要な書類
どんな相続財産・債務があるかによって必要な書類は変わりますので、
各財産ごとに確認していきましょう。
生命保険関係
- 保険証券
- 解約返戻金の計算書
- 保険金支払明細書
預金関係
- 通帳
- 取引明細(通帳で履歴を追えない場合)
- 残高証明書
- 預金利息計算書
取引明細は最低でも過去3年分は取るようにして下さい。なぜなら、3年以内の生前贈与については相続財産に加算する必要があるからです。取引明細を見て、まとまった金額を振り込んでいたような場合は、生前贈与を疑いましょう。
また、認識していない口座に振り込みをしているようなケースもありますので、できれば、最大期間である10年分を取っておきたいですね。
証券関係
- 残高証明書
- 株価が分かる資料
上場株式の評価は、以下の金額のうち最も低い価額とします。したがって、これらの株価をチェックする必要があります。
- 亡くなった日の終値(※)
- 亡くなった月の終値の平均額
- 亡くなった月の前月の終値の平均額
- 亡くなった月の前々月の終値の平均額
※亡くなった日が土日祝日などで証券市場が開いていなかった場合
その亡くなった日の直近の営業日の終値となります。土曜日の場合は金曜日、日曜日の場合は月曜日という具合ですね。
また、3連休の真ん中だったような場合は、直近営業日が2日ありますが、その場合は両方の直近営業日の終値の平均額をもって終値とします。
非上場株式
その法人の決算書、申告書
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権の株式、預託金預り証
自動車
車検証など
納税関係
被相続人が事業をしていた場合は、所得税・消費税の準確定申告というものを、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内にしなければなりません。
したがって、
- 直近の所得税及び消費税の確定申告書
- 減価償却明細
などを入手する必要があります。
また、年金所得者の場合で所得税の還付が受けられるようなときは、還付申告をすることもできますので、確認しましょう。この場合は、年金の源泉徴収票、保険料の控除証明書などを取得する必要があります。
葬式費用
葬儀料、飲食費等の領収書
なお、お布施や戒名代は領収書がもらえないケースがあると思います。その場合は、金額をメモしておくようにして下さい。
あまりない特例の適用を受ける場合
以下の特例を受ける場合には、いくつかの書類を用意する必要があります。なお、戸籍謄本や遺言書など、既に用意しているものは除いて記載しています。ご了承ください。
特定計画山林の特例
- 市町村長等の認定を受けた森林経営計画書の写し
- その他特例の適用要件を確認する書類
特定受贈同族会社等に係る特定事業用資産の特例
- 特例の適用要件を確認する書類
農地等についての相続税の納税猶予の特例
- 相続税の納税猶予に関する適格者証明書
- 担保提供関係書類(登記事項証明書、固定資産税評価証明書など)
非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例
- 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則7-4の経済産業大臣の認定書の写し
- 同条3項の申請書の写し
- 会社の定款の写し
- 会社の貸借対照表及び損益計算書
- 会社の登記事項証明書
- その他特例の適用要件を確認する書類
- 担保提供関係書類(供託書正本、質権設定の承諾書など)
山林についての相続税の納税猶予の特例
- 市町村長、農林水産大臣の証明書及び農林水産大臣の確認書
- 市町村長等の認定を受けた森林経営計画書の写し
- その森林経営計画の市町村長等の認定通知の写し
- 森林法17-2の届出書の写し
- その他特例の適用要件を確認する書類
- 担保提供関係書類(登記事項証明書、固定資産税評価証明書など)
医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除・税額控除の特例
- 認定医療法人の定款の写し
- 認定医療法人の認定移行計画の写し
- 相続開始の直前及び相続開始時の認定医療法人の出資者名簿の写し
- その他各種税額控除の特例ごとに必要な書類
延納申請
- 延納申請書
- 金銭納付を困難とする理由書
- 担保目録及び担保提供書
- 不動産等の財産の明細書
- 担保提供関係書類(登記事項証明書、固定資産税評価証明書など)
物納申請
- 物納申請書
- 金銭納付を困難とする理由書
- 物納財産目録
- 物納手続関係書類(登記事項証明書、公図、所在図等)
手続き関係のおわりに
ということで、何やら色々ありましたので、最後の最後にまとめておきます。
この他の財産がある場合も、基本的にその財産を持っていることを証明できる書類を用意する必要があります。