いざ相続があった時に、何から行えばいいのでしょうか。遺言書を探したり相続財産を把握したりすることも大切ですが、手続き的には「戸籍謄本を取ること」をまず優先した方がいいでしょう。
戸籍謄本なんて役所にいけばすぐ取れるし・・・と思われたかも知れませんが、これが結構苦戦する可能性がありますので、内容を確認していきましょう。
目次
そもそも戸籍謄本とかって意味がわからない
一般の方にとっては、戸籍謄本はあまり馴染みのないものかと思います。
戸籍関係の書類には、以下のものがあります。
- 戸籍謄本
- 戸籍抄本
- 除籍謄本
- 改製原戸籍
どれも同じようですし違うようですし、よくわからないですよね。
そこで、
・戸籍謄本と戸籍抄本
・戸籍謄本と除籍謄本と改製原戸籍
に分けて確認していきましょう。
戸籍謄本と戸籍抄本、どちらを取るか
戸籍には「戸籍謄本(とうほん)」と「戸籍抄本(しょうほん)」とがあります。両者は似ているようですが、どんな違いがあるのでしょうか。
戸籍謄本:その戸籍に入っている全員の事項が記載
戸籍抄本:その戸籍に入っている一個人の事項が記載
例えば、相続太郎さん一家の戸籍を取ったとすると、
戸籍謄本:一家全員の記載がある
戸籍抄本:相続太郎さんのみの記載がある
ということになります。
戸籍謄本は「全部事項証明」、戸籍抄本は「個人事項証明」と呼ばれていることからも、その内容の違いがわかりますね。
ということで、相続の手続きで必要なのは「戸籍謄本」になります。誤って戸籍抄本を取ってしまうと、取り直しになりますのでご注意下さい。
除籍謄本と改製原戸籍謄本は戸籍謄本と違う?
戸籍に誰もいなくなったら除籍謄本
戸籍謄本にはその戸籍に入られている方全ての情報が載っています。ただ、死亡・結婚・離婚等の理由により戸籍からいなくなった(「除籍」と言います)人の情報はわかりません。
そして、その戸籍に入っていた人が全部いなくなった場合の謄本を「除籍」謄本と呼びます。
夫が亡くなったような場合、通常は妻や子が戸籍にいますが、離婚していて、かつ、子供たちは全員結婚していたようなケースでは、夫の戸籍に入っている人はいなくなりますので、戸籍謄本ではなく「除籍」謄本となります。
戸籍が古いと改製原戸籍
旧来、戸籍謄本は「手書き」でしたが、近年のコンピュータ化によってどんどんデジタル化されていきました(直近では平成6年)。
この際に、紙で保管されていた手書きの戸籍のことを改製原戸籍と言います。要するに、デジタル化される前の相当古い戸籍謄本のことですね。
※
相続手続きでは、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍のどれも取得するケースが出てきます。ただ、いちいち「戸籍謄本又は除籍謄本又は改製原戸籍」と書くと読む方も疲れてしまうと思いますので、以下、「戸籍謄本」と一括りにしていきますので、ご了承下さい。
誰の戸籍謄本が相続の手続きで必要なのか
戸籍謄本の違いが分かったところで、次に誰の戸籍謄本を取得すればいいのでしょうか。結論から言いますと、被相続人(亡くなった方)と相続人全員の戸籍謄本を取得します。
被相続人の戸籍謄本は出生~死亡まで
被相続人の戸籍謄本については、出生から死亡まで全て取り揃える必要があります。被相続人に隠し子がいたような場合、現在の戸籍だけではその存在を確認することができません。
したがって、死亡から出生まで遡って戸籍を取得することで、相続人を確定させる必要があります。
相続人の戸籍謄本は現在分
相続人については、隠し子云々の論点はありませんので、現在の戸籍謄本を取得すればOKです。
孫、兄弟姉妹が相続人の場合は結構大変
相続人である子が亡くなっていて、その子(孫)が相続するような場合(代襲(だいしゅう)と言います)、亡くなった子の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。
また、兄弟姉妹が相続人の場合はもっと大変で、被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。
どちらも、被相続人の戸籍謄本を出生から死亡まで取得するのと同じ理由で、隠し子がいないか等を確認するためです。この手続きをしないと、その代襲相続人又は兄弟姉妹が相続人であるかの確定がされないんですね。
戸籍謄本の請求方法
取得しなければならない戸籍謄本が把握できましたら、次は実際に戸籍謄本を請求する手続きをしなければなりません。戸籍謄本の請求先は「本籍地の市区町村役場」ですので、近くにあれば直接行けばいいですが、遠方の場合はそうも言っていられませんので、郵送で取得することになります。
戸籍謄本を取得するために必要なもの
以下の書類を市区町村役場に提出する必要があります。
- 戸籍交付申請書
市区町村所定のフォーマットで、インターネット経由でダウンロードできます。仮にフォーマットがない場合は、異なる市区町村のフォーマットを流用しましょう。
参考)東京都千代田区のフォーマット
- 印鑑
実印でなくてOKです。ただし、シャチハタはダメです。 - 本人確認書類
免許証、マイナンバーカードなど。 - 発行手数料
概ね全国一律で以下の金額となります。
戸籍謄本:450円
除籍謄本:750円
改製原戸籍:750円
郵送で取得する場合に必要なもの
戸籍謄本を郵送で取得する場合には、以下のものが必要になります。
- 戸籍交付申請書(押印したもの)
- 本人確認書類のコピー
郵送の場合は本人確認書類をそのまま送る訳にはいきませんので、コピーを送ります。 - 手数料相当の定額小為替
お金はそのまま送れませんので、一般には定額小為替を郵便局で購入して送ります。現金書留でもいいのですが、現金NGのところもありますので、定額小為替の方がいいでしょう。なお、定額小為替が足りないと再度送る必要がありますので、多めに入れておくことをおススメします。
除籍謄本+改製原戸籍で1,500円ですので、1,500円入れておけば間違いありません。もちろん、多かった分は定額小為替で返却されますのでご安心下さい。 - 切手を貼り付けた返信用封筒(宛名は自分)
戸籍謄本を送ってもらう宛先を記載した封筒に切手を貼って同封します。切手を貼り忘れるケースが多いので注意して下さい。
何通の戸籍謄本を取るべきか
戸籍謄本の用途でメインとなるのは、金融機関の名義変更です。相続開始後は何かとお金が掛かりますので、特に預金については早く名義変更をしたいですよね。
そのため、預金口座が複数あるような場合は、戸籍謄本も複数取っておいた方がいいでしょう。いったん提出して原本を返してもらうことはできますが、同時に行うことができませんので、最低でも2セットは用意しておいた方が何かと便利だと思います。
謄本の見方
いざ戸籍謄本を取得したはいいけど、どこをどう見ていいかわからないですよね。
見方のポイントとしては、「転籍」という言葉を見つけることです。「●●県△△町より転籍」とあれば、そこがその戸籍の直前の戸籍になりますので、出生を辿るために転籍前の市区町村に戸籍謄本を請求していきます。
また、改製原戸籍の場合は、とにかく「住所」の記載を探しましょう。改製原戸籍は「昭和3年⇒昭和参年」といったように相当読み辛いですが、検討はつくと思います。また、婚姻・死亡・養子などのキーワードを見落とさないようにしましょう。
あと、戸籍の筆頭者ではなく戸籍に入っている人の戸籍をたどる場合は、筆頭者の転籍履歴で追うようにしましょう。
戸籍謄本は何に使うの?
必死になって取得した戸籍謄本ですが、何に使用するのでしょうか。戸籍謄本を必要とするケースは以下の通りです。
- 相続税の申告
- 不動産登記
- 預金等の名義変更
なお、相続放棄や限定承認がある場合にも戸籍謄本を提出する必要があります。これらは相続の開始があった日から3ヶ月以内にしなければならない手続きですので、戸籍謄本も3ヶ月以内には全部取得しておきたいですね。
戸籍謄本の手続きまとめ
ということで、戸籍謄本とは何ぞやから取得方法まで駆け足で確認してきましたが、いかがでしたでしょうか。
基本的には、
- 被相続人の出生から死亡まで
- 相続人の現在分
の戸籍謄本を取得し、
- 金融機関の名義変更
- 登記手続き
- 相続税の申告
に取得した戸籍謄本を使用します。
戸籍謄本がないと相続人すら確定しませんので、相続のスタートを切ることができません。相続税の申告期限は相続の開始があったことを知ったひから10ヶ月以内ですが、
モタモタしているとあっという間に申告期限がやってきます。
できれば、3ヶ月以内には全ての戸籍謄本を入手しておきたいですね。面倒な場合は、専門家に丸投げするのもいいでしょう。僕なら絶対にそうします(笑)