時代劇『遠山の金さん』をご存知でしょうか。奉行所で、罪人が「証拠、証拠」と連呼すると、北町奉行の遠山金四郎が桜吹雪の刺青を見せ付けて、みごと犯罪成立。実は、税務署と納税者の関係もこれと同じだったりします。
・遠山の金さん=税務署
・罪人=納税者(ちょっと表現はよくありませんが・・・)
刺青を見せたことが証拠(?)となり犯罪が成立したように、確定申告で必要経費を否認するためには税務署が証明しなければなりません。これを税務署側の立証責任といいます。ぜひ、覚えておきましょう。
もくじ
確定申告をした後の立証責任とは重たい荷物
確定申告で必要経費に落とせるかどうかは事業との関連性があるかどうかです。それを納税者が説明したら、逆に否認するためには税務署側は立証責任を求められます。
29万円のパソコンを例にしましょう。
納税者側が確定申告で必要経費とするためには、事業と関係があることを説明しなければなりません。これって、そんなに難しいことではないですよね。反対に否認するため、税務署側が立証責任を果たすのは大変でしょう。しかし、この仕組みにはワケがちゃんとあるんです。なぜ、確定申告で必要経費を否認するのに、税務署側は立証責任という重い荷物を背負うのでしょうか。
国家権力が立証責任を背負うのにはワケがある
納税者が確定申告で落とした必要経費を否認するため、税務署が立証責任を背負うのは強大な権力があるためです。これは検察庁などの国家権力がもつ宿命です。
さて、いかに税務署の権限が強力なのかを上記のパソコンを例にしましょう。納税者が事業と関連付けて説明責任を果たしました。民間人ならこれ以上は調べようがありません。
ところが税務署になると話は別です。たとえば、本当はインターネットショッピングやオンラインゲームなどのプライベートに使用したと疑われる場合は、これらを調査することができます(質問検査権と言います)。個人にはできないことですよね。
このように国家権力は非常に力を持っています。だからこそ、確定申告で必要経費となるかどうかを税務署側が立証責任を背負うことで、納税者とのパワーバランスが保てるんですね。
ちなみに、税務署側は法に則って立証をする義務があります。確定申告であれば、所得税法ですね。ですので、税務署側に何か言われた際は「それは何という法律に謳われているのか?」というのを必ず確認するようにしましょう。法的根拠がないものは、税務署と言えども否認することはできません。
確定申告で必要経費に落とすためには慎重さが大切
こんな言い方は語弊があるかも知れませんが、納税者にとって、確定申告での必要経費に係る税務署側の立証責任はありがたい制度です。しかし、証明する能力があるためのルールであることは忘れないでくださいね。
どうせ立証できないだろうとタカを括っていると思わぬ火傷を負ってしまうかも知れません。必要経費になるかどうかの判断は、税理士や税務署に相談するか、自己責任かのいずれかになります。あなたはどうしますか?
西原理恵子さんの脱税できるかな
漫画家西原理恵子さんの著作に「できるかな」というシリーズがあります。この中に、「脱税できるかな」というびっくりするようなタイトルのものがありましたので、一税理士として読んでみました。
内容としては、以下のようなものです。
・税務調査で1億円を追徴すると言われた
・ゴネた
・追徴税額が2千万円になった
1億円が2千万円になったのですから、実に8千万円もの税金を納付せずに済んだことになりますね(そもそも最初の1億円というのが根拠のあるものかは不明ですが)。これは、税務署側が8千万円部分について立証できなかったためだと考えられます。
架空人件費を計上したり、領収書を偽造したりとやりたい放題だったようですが、その辺は立証できたのでしょうかね。これを読んでいるとゴネ得はあるんだな・・・などと思ったりするのですが。。。
納税は国民の義務ですので、嘘はつかないようにしましょうね。
参考)
嘘の確定申告書は税務署にすぐバレるというのは都市伝説か
確定申告で計上した経費が正しいと判断するのは誰?
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