インターネットが普及してから、楽天、せどり、Amazonなどのショッピングサイトを利用する物販ビジネスをする個人事業主がいます。そのビジネスで、確定申告をする上で付きまとう問題は、年末時点における在庫のカウントですね。ちなみに、在庫のことを会計用語で棚卸資産といい、確定申告では次のように位置づけられています。

棚卸資産=必要経費にならない

前年より在庫が増えれば所得金額は増え、減れば所得金額も少なくなります。これが確定申告をするときの棚卸資産に対するルールになります。

棚卸資産とは来年以降の売上に貢献するもの、使用するもの

それでは、確定申告をするときの棚卸資産とはどのようなものでしょうか。大きく分けれ2種類に分類されます。

①将来、現金に変わるもの

・商品や製品
・原材料
・半製品
・仕掛品や半成工事(作りかけの製品や工事中の建売住宅など)

②期間配分するもの

・年末までに保存している消耗品、切手など

上記①については、売上時の必要経費となります。上記2については、使用時の必要経費です。したがって、売上又は使用がない状況では原則として必要毛日いずれの棚卸資産の共通点は、売上に貢献した時点で費用になり、確定申告で所得金額から控除されることです(消耗品は使用した年度の必要経費になるのが原則です)。

確定申告を複雑にしないための特例制度

通常、棚卸資産は確定申告で資産に計上する必要があります。しかし、それが強制されるのは「①将来、現金に変わるもの」だけです

「②期間配分するもの」は確定申告をするたびに計算するのが面倒なので、購入した年に必要経費とすることが認められています。それは当然で、ボールペーンやプリンター用紙などの数量をカウントしていたのでは事業活動に支障をきたします。

少額な消耗品のために確定申告で時間をかけるのはもったいないですよね。そのため、毎年継続することを条件に棚卸資産に計上しなくてもよいルールが確立されています。

消耗品を棚卸資産に計上しなくてもよい理由は税法の基本的な考え方に基づくものです。その背後には、商品の仕入と違い、事業規模の大小に関係なく、購入する金額に大きな変動がないから認められているんですね。年末に残る消耗品はおよそ同じぐらいの金額なので、確定申告で税金の計算が年ごとに大きく変わってくることはありません。

ただし、あまりにも大量に購入した場合は税務調査で否認される可能性が高くなります。例えば、通常は切手の在庫が100枚程度なのに期末だけ1万枚あるようなケースですと、9,900枚分は棚卸をするようにと指摘されることでしょう。あくまで、良識の範囲ってことですね。

棚卸資産の価格に含めるもの含めないもの

棚卸資産に計上する金額

それでは確定申告で棚卸資産に計上する商品や製品などの費用とは何でしょうか。基本的には次の金額の合計額となります。

①購入するための直接的なコスト

・引取運賃、荷造費、関税などのコスト

②購入するための間接的なコスト

・購入するための事務・検収・整理などの費用
・会社間の商品の移動費用
・季節商品を保管するための費用

など

間接的なコストに含めないで良いもの(必要経費にできるもの)

上記のような商品を購入するための間接コストが、すべて価格に転嫁する基準になるのでしょうか。いえいえ、そんなことはありません。それを考慮した内容が法人税基本通達5-1-1に書いてあります。

具体的には購入するための間接コストは購入した金額のおおむね3%以内なら棚卸資産にプラスする必要はないとあります。

いや、法人税でなく所得税だよ!と思われたかも知れませんが、所得税については明文化されていないため、この規定を当てはめて考えても良いでしょう。

棚卸資産と判断する基準

確定申告で棚卸資産を計算する根拠は販売価格に転嫁するかどうかです。それを別の切り口から表現すれば、経済的な価値を評価することを意味しており、棚卸資産は、換金能力を示していると言えますね。

 

おまけ)棚卸資産を自家消費した場合の取扱いは

野菜といえばスーパーで売られているイメージですが、意外と八百屋さんって存在します。さて、その八百屋さんの店主は、野菜や果物を商品用と家庭用に分けて買っているのでしょうか。いえいえ、普通は問屋からまとめて仕入れています。

家庭用と商品用をイチイチ分けるのは面倒ですし、問屋で買った方が安いですので当然といえば当然かと思います。ただ、そこで問題となるのは、野菜の仕入を商品用と家庭用とどう分けるかです。税法では家庭用部分を自家消費という名の売上を計上することで、所得金額を計算し、自家消費分は棚卸資産に含めません

余談ですが、自家消費のありえる業種が、確定申告で自家消費を売上に計上していなければ税務署から目をつけられる可能性が高いので注意しましょう。なお、自家消費の売上金額は、次のうちいずれか大きい金額とし、その金額で確定申告をします。

・売価の70%
・仕入原価

参考)

確定申告で選択できる6つの棚卸資産評価方法

 

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