「診療値引き」という言葉をご存知でしょうか。診療値引きは歯科医院などが、特定の人に対して窓口負担分を値引く行為で、結構一般的な手法になります。

確定申告に関する書籍では診療値引きが節税手法として紹介されていたりしますが、診療値引きは普通の値引きと違って、やり方を間違えてしまうと、確定申告の内容について税務署から否認されるリスクがあります。

そもそも診療報酬は、健康保険法第74条で自己負担分を支払いなさいと書いてある以上、クリニック側が自由に値引きできないと考えるのが自然ですよね。今回はそんな診療値引きについて確認していきましょう。

1.診療値引きの会計処理

診療値引きをした場合であっても、会計処理としては総額を売上として計上します。診療収入1万円のケースで確認してみましょう。

・クリニックの事業と関係がある人

接待交際費として取り扱います。

(売掛金)7,000  (診療収入)10,000
(交際費)3,000

・クリニックの事業と関係がない人

事業主貸として取り扱います。確定申告の原則通り、診療値引きには事業との関連性が求められます。したがって、事業と関係ない人に対する場合は院長がポケットマネーで自己負担分を肩代わりしたことになります。

(売掛金)7,000  (診療収入)10,000
(事業主貸)3,000

・クリニックの従業員

福利厚生費として取り扱います。ただし、同じ従業員に偏っていたり、金額が多くなると、給料になり源泉所得税の対象になるので注意が必要です。

(売掛金)7,000  (診療収入)10,000
(福利厚生費)3,000

2.診療値引きの処理は痕跡を残すことに注力

さて、確定申告の実務で診療値引きをどう処理していきましょうか。方法は2つあります。

・窓口徴収簿に記載しないこと
・窓口徴収簿に記載したものを二重線などで抹消すること

どちらを採用するのは自由ですが、保険診療の保険部分を請求する金額の管理からいえば、診療値引きの対象分を二重線などで抹消する方がお勧めです。受け取らないという意思表示をする意味もありますし、同じ確定申告の内容であっても税務署からの信用が得られ易いと考えられますね。

3.家族に診療値引きをした場合における確定申告の取り扱い

ラストは、家族に診療値引きした場合における確定申告での取り扱いを紹介しましょう。家族に診療値引きをした場合、飲食店の食材を家庭料理に使用したのと同じように、家事消費として取り扱われます。収入金額に計上する金額は、次の金額うちいずれか大きい金額になります。

・診療値引き分の70%
・注射器や包帯代などの治療に必要な消耗品代

 

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